忍者ブログ
コクミンのオタク日記。 銀魂・近土話は2012年5月まで。スラムダンク話は2012年7月以降。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

昨日からの続き。西遊記ネタ自体は5/4から。
拍手下さる方、本当にどうもありがとう! おかげでダラダラ続いています。
全くの独り言だとさすがにちょっと寂しいのでね(笑)。
メッセージ下さった方へは「お返事」のページにレスがあります。
ありがとう、いい人たち!

---
「しっかりしろよ。オイッ。センドー!」
叫ぶ桜木の声を意識の彼方で聞きながら、仙道法師は夢を見ていました。
それは夢の形を借りた、幼少の記憶でした。
捨て子として寺に拾われた仙道には、寺と仏の教えがすべてでした。
教えを学び、年長者のいうことを素直に聞く仙道は、長ずるにつれ利発に、そして見目麗しくなりました。
目鼻立ちの整いは勿論、不平を漏らさず陰口を叩かぬ、我慢強い努力をする性質は、同じような境遇の子供たちの中でもひときわ目を引くものでした。
そんな仙道が大人たちには可愛がられるという名目で、同年輩の者たちにはやっかみの為、体を好きに使われるようになったのはいつの頃だったでしょう。
はじめは苦痛でした。けれど仙道が本当に我慢ができなくなったのは、その苦痛に慣れた自分の体が、快楽を拾い集めだしたことでした。
辛いだけならば修行と思い、耐えることもできます。なのにそこへ快楽が混じってしまえば、まるで自分がその行為を待ち望んでいるかのようです。
仏典にも性愛の教えはあります。けれどそれは男女の和合を説くものであり、快楽に耽ることではない筈です。
仙道は夜に怯え、それまで以上にひたすらに、昼間のお勤めに励みました。
誰もが嫌がる仕事へ積極的に名乗り上げ、それこそ夜は夢も見ずに眠れる程に身を粉にして働きます。
その内、寺院での地位が高くなればなる程、自分に手を出してくるものが減ると気づきました。それからの仙道は、まさに寝食を惜しむように仏の教えにのめり込み、やがては唐の国でも一、二を争う高僧として数えられるようになったのです。
もう、夜の不埒な誘いをかけてくるものはいません。あったとしても、それをかわす社交も儀礼も、仙道は身に着けています。
それでも。
仙道が拾われ、育てられたのは大きな寺でした。今も居を構えるそこには、自分より身分が下となった兄弟子がいます。私腹を肥やすことにしか目のない腐敗した名ばかりの師がいます。それらの目は、自分が稚児として扱われていたことを知っていると、忘れてなぞやるものかと仙道の肢体を舐め回します。
そんな時、西天取経の話が持ち上がり、見事仙道がその旅に選ばれました。
険しい道のりも妖魔どももなんのその、公に寺から出ることができるのだと、仙道は一も二もなくその話に飛びつきました。
なにより一途にすがり続けた仏の真の教えを学べるかと思うと、光が、希望が湧いてきます。
道中、襲かかる魔物や妖魔が自分を性的に狙っていると知った時は、笑い出したい気分でした。
人も魔物も関係ない。自分の価値は体だけなのだ。寺から出たところで、次は妖魔どもに食らわせてやるだけのこと、ただ相手が変わるにすぎないのだ。西天取経の旅に自分はどれほどの望みをかけていたというのか。自分のいた寺だけが異常だと、世間は違うのだと生ぬるい願望を抱いていたのか。
そんな甘い考えを抱いた己が許せないとでもいうように、旅に出る際に法師となった仙道は、妖魔どもにもやすやすと自分の体を与えようとしました。
そのたび一番弟子となった桜木が救いだし、怒鳴ります。
「もっとてめーを大事にしろってんだ!」
大事もなにもない。既に汚れたこの体を一時抱くことで、妖魔どもが他の一般人に手を出すことを控えたり、飢え(かつえ)が癒えるというのなら、さあ好きにしろ。
そう思っていた仙道法師ですが、体だけを目当てとしない桜木に、そして自分についてきてくれる沢北、福田、流川といった者たちの存在に、無意識に救われていたのも事実でした。
ただ幼少から快楽を教え込まれた体は時に、法悦よりも直接的な悦楽を求めてしまうことがあります。
今がそうでした。
体が熱く、燃えるようです。
「……大丈夫か」
耳元で囁く声に、仙道はゆっくりと瞼を開きました。
「桜木……」
大きな樹にもたれ座った形で自分を抱き締める相手に、そっと仙道法師が呼びかけます。
蓋をしておきたい過去が夢の中から黒い腕を伸ばし、自分を、熱く湿った闇の世界へ連れ戻そうと鉤爪を伸ばしているかのように感じられました。
拒む力もなかった、あの頃とは違う。
今の自分は悦楽すらも選んで、自分の意志で貪るのだ。
煮えたぎる欲望を腹の内に抱えながら、仙道法師は目の前の桜木に囁き続けました。
「したい……。して。なぁ、抱いて。むちゃくちゃにしていいから……」
言いながら、寝ぼけているのかと仙道法師も自分でちらりと思います。ですがそれが本心でした。
体が火照って仕方がないのです。治めるにはただひとつ、欲望を吐き出すしか思いつきません。
その為の相手は誰でもよかったといえば、桜木は傷つくでしょうか。
そんなことまで考えながら、仙道法師は身動ぎしようとしました。しかし自分を抱き締める桜木の腕は緩まるどころかますます強くなりました。
「さ、くら、ぎ」
向き合う形で抱き締められ、桜木のものが着衣の下、欲情による反応を示していることが仙道法師にも感じられます。
それが自分を貫き、追い上げてくれるのならばどれほどの快楽が得られるだろう。
そんな浅ましいほのかな期待を、自分の背を強く抱く桜木の腕が砕きます。
「桜木? きつい。……離して。オレ今、してーの。お前がヤならオレ、自分でするし……」
興奮に浮かされた状態で仙道法師が囁きますが、桜木は小さく左右に首を振りました。
「オレのせいだ」
いつも元気いっぱいの桜木の声とは思えない程沈んだ声に、仙道法師はわずかに動く顔を上げます。
「普段葉っぱしか食ってねーくせに、おめーがオレの血なんざ舐めるから。あたったんだよ。興奮剤一気飲みみてーなもんだ。多分もうじき抜けっから。じっとしてろ」
その言葉にようやく仙道法師にも合点がいきました。
確かにこれまで獣や魚の肉は勿論、血を口したこともありません。
それがいきなり神仙の、天界で大暴れした活力溢れる岩猿の血を舐めたとあれば、なるほど、誰に高僧といわれようが所詮人に過ぎない自分が、のぼせ上がるのも無理はありません。
半ばからかうつもりで桜木の頬を舐めただけのはずが、とんでもないことになりました。


---
勿論本来の西遊記はこんなじゃないと思う。けどほら、BL西遊記だし!
ふはははは!
…なんか色々、ごめん。

拍手[7回]

PR
拍手押して下さる方が一人でもいるってことは、まだ続けてもいいですか。
という訳で調子に乗ってBL西遊記。スタートは5/4からだよ!
---

旅を続ける仙道法師一行は、道なき道を歩みます。
その時々で先頭に立つ弟子たちが藪を薙ぎ、しんがりを固めつつの行程です。
「あいてっ」
ある時仙道が馬上で声を上げました。慌てた弟子たちが見れば、仙道法師の首から一筋の血が流れています。
「あー。平気。ちょっと小枝に引っかかっただけ。ぼうっとしてた」
仙道法師は袖の内衣を破ろうとしながら、照れたように微笑みました。と、桜木が軽く浮かび上がりその手をとめ、仙道法師の首筋へ、ぺろりと舌を這わせました。
「ちょ、あの。……桜木?」
顔をのけぞらせながら、仙道法師は馬から落ちずにいられるよう、手綱をぎゅっと握りしめます。
その間も桜木の舌はとまりません。
ゆっくり、ゆっくりと傷口を何度も舐め回します。
その優しい、けれどどこかなまめかしい感触に仙道法師は小さく震えました。
「あの……。さくら、ぎ?」
他の弟子たちは呆気にとられたのでしょうか。風が葉を揺らす音だけが数瞬流れていました。
「よし。これで平気だ。このくらいの傷は舐めてりゃ治る」
間近でニッと笑った桜木の顔に、仙道法師の胸がドキリと鳴りました。けれど悪気のない、それどころかこちらの為を思ってくれた行いに、なにか下心的な意図があろう筈がありません。
「あ、……ありがと」
呟くように言うと仙道は、決まり悪げに沢北、福田といった他の弟子たちへ目をやります。
やれやれと溜息のような長い息を吐き出す福田と対照的に、沢北はなにか言いたげに桜木を指差しながら口をパクパクさせています。
「ん? どうした。これが咄嗟の判断力だ」
威張って胸を張る桜木に、沢北が怒鳴り声を上げました。
「てっ、てめえがちゃんと藪払わねぇからだろが! お師匠はな、馬に乗ってんだよ。その辺きちっと考えに入れて藪払えってんだよ!」
「ぬ? てめー……。オレが先達だってんで妬いてんな?」
「バカヤロウそりゃただの当番じゃねぇか! 先達なら先達らしくちゃんと藪を払えバカヤロウ!」
「妬くな小坊主」
「誰が小坊主だ!」
今日も今日とて賑やかな旅の空、仙道法師は隣を歩く福田と目を合わせ微笑むと、そっと自分の首筋を撫でてみました。
桜木の唾液が効いたのでしょうか、そこからはもう血は流れていません。
なのに舐められていたその部分の熱い疼きは、それからしばらくの間、仙道法師の胸を締めつけていました。
「……しゃれになんねぇ」
吐息のようにかすかにこぼれた仙道法師の呟きは、幸いなことに誰にも聞かれていませんでした。

---
どうなの(笑)。

拍手[7回]

というかメインはコレ花仙か。
キャストなどは5/4の日記から見てね。

仙道法師は桜木悟空と力量がスッゲーあるんで、普段の仙道より可愛くて、それはそれで妄想がとても楽しい。
普段の仙道なら「はっはっは。うんうん」であしらっちゃうからね!
----

さてそんな仙道法師ご一行。
白馬に化けた流川にまたがり、今日も今日とて旅の空。
「そういやさ」
仙道法師がふと思いついたように口を開きました。
「妖魔がオレを性的に食いに来るのって、ウマイからとか寿命が延びるからっていうけど、あれ、お前たちにも当てはまるの?」
空高く舞う鳥の声にあわさり、それはなんとものどかな口調でした。
「ああ? オリャァ食ってもウマかねーぞ?」
傍を歩く桜木悟空が軽く片眉を上げ答えます。
「なんだよおめー、誰かに食われたことでもあんのかよ」
ひやかすような声は沢北悟浄です。
「バカヤロウ。この金剛石から生まれたオレ様を食えるヤツなんざいねーってんだよ」
「まぁな。てめーの石頭齧りてぇってヤツもいねえだろうけどよ」
「なにおう」
けらけら笑う沢北に、軽く桜木が凄んでみせる、これも今はすっかりおなじみとなった旅の日常風景でした。
軽く肩をすくめる福田八戒にまで、桜木はなにか言ってやろうと歯を剥きました。
それを仙道が抑えます。
「違うって。お前たちもオレと同じくらいウマイかってことじゃなくて。オレを食ったら、お前らも元気になったり、ウマかったりするの? って聞いてるの。お前らも今は仏門とはいえ元はホラ、そっち側だし」
「そっち側ってなんだ」
「妖魔と神仙一緒にすんな」
ぎゃあぎゃあ騒いでみせる桜木や沢北も、本気で怒っている訳ではありません。
けれど仙道は「わりぃ」とひとつ片手で拝むように手を上げ謝りました。
と、傍らで福田が物言いたげに馬上の仙道を見上げています。
「ん? どした?」
「……多分」
言葉少ない福田の声に、仙道は耳を傾けました。
「多分、そう。オレたちが食っても、お前は、ウマイ」
その言葉と同時に桜木や沢北はまたしても騒ぎ始めました。
「バカヤロウどこの世界にお守りしてる対象を食うヤツがいる!」
「そうだ、守ってナンボの世界で真っ先に弟子が手ぇつけてどーする!」
「このむっつり野郎、密かに狙ってやがんだな?」
「なにをぅ? させねーぞそんなこたぁ!」
好きなように叫ぶ二人に苦笑を漏らしながら、仙道は福田に話しかけました。
「じゃあさ、チューくらいならオレ別に構わねーけどって言ったら、お前らチューしたい?」
「なっ!」
「ああ!?」
驚き、固まる桜木と沢北を尻目に、白馬に扮していた流川が人間体型を取りました。
「わっ」
馬の背からいきなりヒト型の流川に横抱きにされた姿となった仙道が、小さく声を上げます。
「したい」
「えっ?」
福田に負けず劣らず無口な流川の呟きに、仙道は顔を見上げます。
「オレは、してー。キスだけでも、いいから」
言いながら流川は抱きかかえた仙道へとそっと唇を寄せました。
「だあああっ。まてまてまてーい!」
「抜け駆けすんなって言ってんだろがああ!」
唇が重なる前に、桜木の頭突きと沢北のドライブが流川を襲いました。
勿論それを素直に受けてやる流川ではありません。
仙道の体はぽぉんと高く舞ったと思うと、福田の腕に収まっていました。
天空では流川、桜木、沢北が思い思いに戦っています。
いずれも本気ではなく、レクリエーションの一環であると判ってはいますが、人である仙道からすると、その唐突さには溜息のひとつも出ようというものです。
「……福田。お前も、オレとキスとか、したい?」
横抱きにされた姿で、仙道が顔を見上げます。福田は少し遠くへ視線を泳がせたあと、黙ってひとつ、大きく頷きました。
「じゃ、いいよ。キスくらい、減るもんじゃねえし。お前らにゃスゲー世話んなってるし」
上空ではいまだ剣戟の音が響いています。
福田は少し考えるように眉間にしわを寄せたあと、ゆっくりと首を左右に振りました。
「どうしてもって時まで、待つ」
「どうしてもって?」
「……敵にやられて、息絶え絶えとか。腹が減って死にそうだとか」
「なにそれ、オレ、非常食?」
答えながらも仙道は、あははと声を上げて笑いました。福田のこういった実直さは、策略に慣れた人間界では中々お目にかかれません。
「いいよ。じゃあ、欲しくなったら言って。オレで役に立つならなんだって」
にこにこと微笑む仙道を、福田はじっと見下ろしながら、また首を横に振りました。
「オレたちはお前のもんだけど、お前はオレたちのものじゃない。仏のものだ。安売りはするな」
「福田……」
こちらを気遣うその言葉が嬉しくて、仙道は今すぐにでも福田へ口づけたくなりました。
けれどそこへ、三人組が地上に戻ってきて邪魔をします。
「てめフクスケ、一人ポイント稼いでんじゃねーよ」
「そーだ。遠慮なくテメーもかかってこいやぁ」
「……どあほうが何人束になっても同じだ」
「なにおう!?」
「てめアホって誰に向かって」
キリのない応酬に、仙道は軽く肩をすくめて桜木を見ました。
「お前さ」
「ん?」
「お前、こないだオレとキスしたろ? あれで元気出たり、した?」
先日、仙道が薬物を盛られた時に、確かに桜木は仙道に口づけていました。
「……!」
「なっ、てめ……! なにが抜け駆け禁止だ!」
「……なんぴとたりとも……」

その後、筋斗雲がどこまで桜木を運んだのかは知りません。

----
アホ話。こんなアホ話にも、拍手本当にどうもありがとう!
あら続けてもいい? って浮かれてて、えへへ。

拍手[7回]

もし茂一が嫁とは別れて一人娘と父子家庭だったりしたら。
とりあえず娘の幸せを願っていい男と一緒になって欲しいな、なんて思う茂一。
そして当然のように仙道ファンの娘。

仙道もよくウチに遊びにくるし、娘とも仲がいいようだ。健全なお付き合いならまあ私が口出すことでもないな、と考えたあれから数年。
「仙道くんが大事な話があるんですって」
娘がそう言っていた。遂にこの日が来た。
あいつがいよいよ結婚の承諾にと現れる訳だ。朝から落ち着かない。家の中だがいっそスーツに着替えるか。その時玄関のチャイムが鳴った。
花束を抱えてやってきた仙道が、娘と一緒になって私の前に座る。
と、仙道は娘に向かって深々と頭を下げた。
「お嬢さん。お父さんを僕に下さい」
ん。…ん?
なぜ仙道は娘相手に宣言をしているんだ?
「判りました。お父さんをよろしくお願いします」
ん? んんん?
「というわけで田岡先生、オレ今日から本腰入れて先生口説きますから」
「はー?」
「お嬢さんの許可もホラ、もらったし」
「お父さんがお母さんになるのはさすがにちょっと、と思ったんだけど仙道くんがお母さんになってくれるらしいから。よかったねお父さん」
「いやいやいや。お前らなんの話をしてるんだ?」
「この日の為に色々、娘さん、協力してくれてたんですよ」
「ねー」
「ねー、じゃなくてだな、オイ」

とかね。
まあ実際の現実で考えたらそんな展開、結構ヘビーですけど(笑)。

拍手[3回]

まだできてない牧仙。
いつもの同じ大学、同じマンションの人たち。

---
久しぶりにオレの部屋で、仙道と飲んだ。仙道は酒が強くていつも潰れる前に自分の部屋へ帰る。
だが昨夜あまり眠れなかったと言った仙道は、床に座り、ベッドにもたれかかった状態で、いつの間にか静かに目を閉じていた。
大学へ入り、同じマンションへ越してきた仙道となんだかんだと一緒にいる内に、立てるかわりに後ろへ撫でつけた髪型を見る機会も増えた。
それでも、たかが髪型ひとつで妙な気分になるのはどういう訳だろう。
仙道という、どこか得体のしれない男のプライベートな一面を覗いているという優越感か。
誰に対して? 
仙道に黄色い声を上げる女の子たちに対して?
その辺りの感覚は自分でもよく判らない。
ただ、仙道の秀でた額やすっきりとした鼻筋、長いまつげが伏せられたところを見ていると、モテるのは頷ける。
仙道は、悪い男じゃない。
人当たりがよく、先輩たちの嫌味ややっかみをさらりとかわす。かといって媚びるでもなく、下の面倒も適当に見るし、おせっかいなほど深入りするでもない。
つまりまぁ、そつがない。
よく笑い、時には拗ねて、きつい練習には皆と同じように泣き言を口にしたりもする。
だがどこか得体が知れない。
それでも目の奥には、時々少しだけ、仙道の本音が映るような気がする。
その瞬間を見逃さず、この男の本心に気づいたのは自分だけだと、仙道にすら告げずにそっと胸の内で味わいたい。
この、自分でも判るおかしな執着の正体を、オレはとっくに知っている。
仙道も気づいているだろうか。
そう考えるとオレは、喉の奥で小さく笑った。
誰よりも聡いこの男が、自分に向けられる感情に気づいていないなどあり得ない。
グラスの残りの酒を呷った氷の音に、仙道が物憂げに眼を開いた。
「牧さんてオレの顔、好きですよね」
放っておけばそのまままた寝入りそうな緩やかな声に、オレは軽く深呼吸をして仙道の目を見た。
今、そこには楽しげな色が浮かんでいる。
「ああ。……そうだな、好きだ」
慣れない台詞は、アルコールが力を貸してくれた。
仙道は軽く目を細め、満足そうに口角を上げる。
「知ってます。でも牧さんは、知らないでしょ」
言いながら仙道は軽く伸びをし、大あくびに浮かんだ涙を親指の腹で拭いた。
どうやら帰る気らしいと察したオレは、引き止めるべきか悩む間もなく尋ねる。
「なにがだ」
「オレ、オレの顔に惚れてる相手とはレンアイしねーんす」
立ち上がった仙道はにっこり笑うと、自分が使っていたグラスを流しへ運ぶ。
レンアイ。仙道の口から出た言葉は、不思議な響きがした。
レンアイ。仙道と恋愛。それが自分の望みなのだろうか。
お前の顔だけが好きなわけじゃないと、今からでも言うべきだろうか。
「……嫌な顔よりは、好きな顔が見たいもんじゃないのか」
言葉が見つからず眉間に皺を寄せながら呟いたオレのセリフに、仙道は小さく笑った。
「まぁね。オレも牧さんの顔、好きですよ」
ごちそうさま、おやすみなさい。
そう言葉を続け、仙道が玄関へ向かう。
このまま帰すのか。追いかけ、連れ戻す? それとも次はお前の部屋で飲ませろとオレも一緒に出るべきか。
多少強引に迫れば仙道はオレを拒まない。なぜかそんな自信がある。
さて、どうしたものか。

拍手[3回]

[1] [2] [3] [4] [5] [6]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新記事
ブログ内検索
忍者アナライズ
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone