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コクミンのオタク日記。 銀魂・近土話は2012年5月まで。スラムダンク話は2012年7月以降。
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まだできてない牧仙。
いつもの同じ大学、同じマンションの人たち。

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久しぶりにオレの部屋で、仙道と飲んだ。仙道は酒が強くていつも潰れる前に自分の部屋へ帰る。
だが昨夜あまり眠れなかったと言った仙道は、床に座り、ベッドにもたれかかった状態で、いつの間にか静かに目を閉じていた。
大学へ入り、同じマンションへ越してきた仙道となんだかんだと一緒にいる内に、立てるかわりに後ろへ撫でつけた髪型を見る機会も増えた。
それでも、たかが髪型ひとつで妙な気分になるのはどういう訳だろう。
仙道という、どこか得体のしれない男のプライベートな一面を覗いているという優越感か。
誰に対して? 
仙道に黄色い声を上げる女の子たちに対して?
その辺りの感覚は自分でもよく判らない。
ただ、仙道の秀でた額やすっきりとした鼻筋、長いまつげが伏せられたところを見ていると、モテるのは頷ける。
仙道は、悪い男じゃない。
人当たりがよく、先輩たちの嫌味ややっかみをさらりとかわす。かといって媚びるでもなく、下の面倒も適当に見るし、おせっかいなほど深入りするでもない。
つまりまぁ、そつがない。
よく笑い、時には拗ねて、きつい練習には皆と同じように泣き言を口にしたりもする。
だがどこか得体が知れない。
それでも目の奥には、時々少しだけ、仙道の本音が映るような気がする。
その瞬間を見逃さず、この男の本心に気づいたのは自分だけだと、仙道にすら告げずにそっと胸の内で味わいたい。
この、自分でも判るおかしな執着の正体を、オレはとっくに知っている。
仙道も気づいているだろうか。
そう考えるとオレは、喉の奥で小さく笑った。
誰よりも聡いこの男が、自分に向けられる感情に気づいていないなどあり得ない。
グラスの残りの酒を呷った氷の音に、仙道が物憂げに眼を開いた。
「牧さんてオレの顔、好きですよね」
放っておけばそのまままた寝入りそうな緩やかな声に、オレは軽く深呼吸をして仙道の目を見た。
今、そこには楽しげな色が浮かんでいる。
「ああ。……そうだな、好きだ」
慣れない台詞は、アルコールが力を貸してくれた。
仙道は軽く目を細め、満足そうに口角を上げる。
「知ってます。でも牧さんは、知らないでしょ」
言いながら仙道は軽く伸びをし、大あくびに浮かんだ涙を親指の腹で拭いた。
どうやら帰る気らしいと察したオレは、引き止めるべきか悩む間もなく尋ねる。
「なにがだ」
「オレ、オレの顔に惚れてる相手とはレンアイしねーんす」
立ち上がった仙道はにっこり笑うと、自分が使っていたグラスを流しへ運ぶ。
レンアイ。仙道の口から出た言葉は、不思議な響きがした。
レンアイ。仙道と恋愛。それが自分の望みなのだろうか。
お前の顔だけが好きなわけじゃないと、今からでも言うべきだろうか。
「……嫌な顔よりは、好きな顔が見たいもんじゃないのか」
言葉が見つからず眉間に皺を寄せながら呟いたオレのセリフに、仙道は小さく笑った。
「まぁね。オレも牧さんの顔、好きですよ」
ごちそうさま、おやすみなさい。
そう言葉を続け、仙道が玄関へ向かう。
このまま帰すのか。追いかけ、連れ戻す? それとも次はお前の部屋で飲ませろとオレも一緒に出るべきか。
多少強引に迫れば仙道はオレを拒まない。なぜかそんな自信がある。
さて、どうしたものか。

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